THE LOOONIES’ ADVENTURE

Character © 2008TTTG


THE LOOONIES

遥か3000年の未来、ロックはまだ生きていた!!
母なる地球に還る壮大な旅。
愛を伝える“LOOONIES”の冒険物語




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『伝説完結』


長い間ご愛読ありがとうございました。
壮大な旅の驚くべき結末をお見逃しなく!


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第1章 NO WAY OUT !
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]
第2章 ドバイ〜砂上のゲート
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16]
第3章 オーストラリア〜巨石の惑星
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]
第4章 神話の森
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]

第5章 真実の泉
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

最終章 満月の審判
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16]
[17] [18] [19] [最終回:前編] [最終回:後編] [エピローグ]全編完結!




◆ありがとうございます!36万PV達成!!◆


◆NEWS!!◆
11/11,12にシンガポールで開催された
「ANIME FESTIVAL ASIA 2011」
経産省のCOOL JAPAN BOOTHに
THE LOOONIESが出展されました!!


2013年06月15日

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THE LOOONIES’ ADVENTURE

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第1章 NO WAY OUT !
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]
第2章 ドバイ〜砂上のゲート
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16]
第3章 オーストラリア〜巨石の惑星
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]
第4章 神話の森
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12]

第5章 真実の泉
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]

最終章 満月の審判
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16]
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2009年10月13日

THE LOOONIES' ADVENTURE<エピローグ>

Story By ワダマサシ



「増える一方だった自殺者の数が、日を追う毎に劇的に減少しています!」窓辺のラモ通信士が、遠くに瞬くダウンタウンの街灯りと数字の書きこまれたカレンダーを交互に見て、嬉しそうに博士に報告する。「変化は先週末に突然起こりました。今日は今のところ自殺者ゼロ!どうやら、ドームに蔓延していた“虚無”は、決壊点寸前で未然に食い止められたようです」
「ヤツら、遂にやり遂げおった…」博士はドームの夜空を見上げ、遥か彼方の地球に向って潤んだ瞳で目礼をする。
「最期の旅立ちに際し、あの五人がロットネスト島でどんな結論を出したのか知る由もありませんが、私は全員無事に地球に帰還したと信じたい…」ラモは、書斎の隅に置いてある青い地球儀に目をやった。
「なあ、ラモ…。ペッパーがその存在を教えてくれた、未来の地球で語られていたと言う“三人の勇者の伝説”じゃが」博士は白いヒゲを蓄えたアゴを指ではさみ、思考を巡らせる表情をした。「誰が、どうして、そんなことを伝承する気になったと思う…?」
「地球の原住民の誰かが、到着した三人の勇者から話を聴き、英雄伝にまとめたのではないですか?」
「では、長い長い旅の話を伝え切る時間だけ、彼らは地球で生存していたことになるな…」
「はい…」ラモはその意図を知ろうと、博士の瞳を覗き込んだ。「…いったい、何がおっしゃりたいのですか?」
「ルーニーズの三人は、立派なヒューマンだったが、残念ながらラブ・チャイルドではなかった」博士はラモの顔を正面から見返す。「出発前にわしが検査をしたのだから間違いない。地球での寿命は、長くとも一日か二日…」
「つまり、伝え終わる前に死んでしまうと?一晩中語り続ければ、可能な気もいたしますが」ラモが反論する。
「しかし到着してすぐ、初めて出会った地球の民にそんなことを語り始めるのは、不自然だと思わないか?」
「たしかに、彼らが自分からそんなことを話し始めるような自慢好きの連中とは思えません」ラモが首を傾げた。「きっと夢にまで見たマザーアースの海を、黙って眺め続けたことでしょう。では、誰が、何のために?」
「語ったのは、三人の勇者と“旅を伴にした者”…」博士が確信に満ちた口ぶりで言った。「そうとしか思えん」
「ではコーラかワンが、英雄伝説の作者だと!?」ラモが目を丸くして言った。
「そう言うことになるな…。つまり、あの二人もその役割を果たすために地球にたどり着いたのじゃ」
「自ら語った伝説に苦しめられていたとは…」ラモが神が課した運命のめぐり合わせに驚き、天を仰ぎ唇の端にラテンユーロ族独特の苦笑いを浮かべた。「マンマ・ミーア(なんてこった)!」

「ショウグンさま…」エンゾが窓に滴る宝石のような雨粒を眺め言った。「勇者たちが旅立ってからというもの、ここも雨の降る日が多くなりましたね」
「降り注ぐ雨は大地を潤し、生命の土壌を育む。豊かな水は大河へ海とへ下る。そして、再び天に雄雄しく昇るだろう。水は血液のように循環し、この惑星を浄化するのだ」ショウグンは玉座から立ち上がった。
「風の民たちも、この気候の変化を喜んでおります。地球を起源とする生命が、この地で再び息を吹き返すかもしれませんね」
「目先の危機は去った。しかし、ここはマザーアースではないのだ」ショウグンは毅然と諭した。「新たな創造の努力を怠ってはならない」
「は、はい…」エンゾは、気が遠くなるほど遥かな時の彼方に心をめぐらせ呟いた。「あと46億年…」
「その前に、また次の勇者がここを訪れることもあるだろう…」ショウグンは言った。「危機は形を変え何度もやってくる。必ずな。我々は、それと闘う次の勇者の到着を待とうではないか」
「次の勇者…」

「婆さんや、若い衆が村に帰ってきて、こっちはすっかりご隠居気分になっちまったがに」広場の縁台に腰掛けたオージンが、作物を仕分けする若者たちのキビキビとした仕事振りを眺め、フリッグに言った。「年寄りだけの頃が懐かしい気もするから、人間というのは不思議なものだがに」
「もうわしらは隠居でいいわさ。時々巨石に素手でよじ登って、趣味の黒曜石拾いが出来ればそれで充分だわさ」
「それじゃ、ぜんぜん隠居してないがに。むしろ大活躍だがに」
「そうかね?」
「んじゃ婆さん、明日にでも、ちょっくら岩登りに行くとするか」
「いいわさ。行こ、行こ」
返事を聴くと、気の早いオージンが日向ぼっこをするアンドロイドラクダを手招きし、すぐに命じた。
「3週間ほどの予定で石探しの旅に出るがに。オメエ、荷物まとめて背中に積んでおくがに」
「ワタシハ、オメエデハナイ…」アンドロイドラクダは、早くも新しい主にタメ口をきいていた。「ワタシノナマエハ、“キャメ”。キャメチャント、オイイ!」
「あの旅人たちのお下がりだから大事に使っているが、この口のきき方には時々ムッとするだわさ」
「旅人たちがここで一緒に暮らしていた頃は、もっと丁寧な話し方をしていた気がするがに」オージンが不思議そうな顔で言った。「性格変ったがに?キャメちゃん」
「チガウ。ワタシハ、モトモト、キャメトヨバレテイタ」
「誰に?」
「ゴシュジンサマタチ。ワンガ、ナマエヲ、アタエテ、クレタ」
「へえ。じゃあ、なんでそのムッとするキャラをあの時封印していたんだわさ?」
「…ダッテ…、ワカレガ、モット、ツラク、ナルト、オモッタ、カラ…」

「ジュニア!ジュニア!」
コーラが日没の迫る中庭に出て、ギターを担いで丘を駆け上がっていく息子の背中に呼びかける。「もう暗くなるわよ!」
「大丈夫さ!」
母親の方を振り返り一度だけ大きく手を振ったジュニアは、海を望む小高い丘のテッペンにある勇者たちの眠る場所へと息を切らせ急ぐ。
栗色の長髪を潮風に千切れるほどなびかせてここにやってくるのが、少年の日課だった。それも多い日には、三回も四回も。
「お父さん、ハンマー、スカー!」ジュニアは、三角獣の角のように並ぶ白い墓石の前にギターを抱えて立つ。「聴いてよ!リフを全部マスターしたよ」
そう言うと、少年はローポジションのコードを思い切り弾き、その勢いのまま腕をグルグル回して声を限りに叫んだ。
「HERE COME THE LOOOOOONIEEEEEES !!!!」
ジュニアは高い丘の上でたった一人、かつて父親たちがドームのダウンタウンで奏でた“Looonies Anthem”をシャウトする。
「僕はロクデナシ!この世を楽しむロクデナシ!なんとかなるさと息を吸い込む、Looonies♪」
眼下の潮騒の音が、まるで大観衆の声援のように聴こえていた。

「やってる、やってる」ワンが窓を全開にして、丘の上から聴こえてくるギターリフに、手を添えた耳をそばだてる。「だいぶ上達したあるな」
「友達を集めてバンドを作るって言い出すのも、もう時間の問題ね」コーラが肩をすくめて言った。「ツアーに出たいなんて言いだしたら、どうしよう」
「行かせてあげればいいあるぞ」ワンが言った。「わたしたちも、夢を追いかけてここまでたどり着いたある」
「そう言われれば、その通りね…」
「ジュニアも、きっと同じことするある」ワンはカクカクと首を振りながら言った。「ああ、昔を思い出すあるなあ」
二人は、そのまま旅の思い出話に花を咲かせ始めていた。
「ただいま♪」
――バタン。ドアが乱暴に閉められた。
「噂をすれば影あるな。鼻歌までエースとそっくりになってきたある」
「こんにちは!ワンおじさん、来てたの?♪」
「だいぶギターがうまくなったあるじゃないか!」
「もっともっと上達して、たくさんの人に聴いてもらうのが夢なんだ♪」
「やっぱりね!そう言うと思ったわ」
エースに益々似てきたジュニアの顔を満足そうな笑顔で眺めていたコーラが、急に真顔に戻り叫ぶ。
「あ!いけない!大事なことを、何年も忘れていた!」
「大事なこと?なにあるか?」
「わたし、大切な約束を果たしていなかったわ!」コーラは突然頭を抱えて、泣きそうな顔になっていた。「なんで今まで忘れていたんだろう…」
「なに?お母さん泣きそうだよ。どうしたの?♭」

「だ、誰だ?!」
地球にいるかもしれないワンに連絡を取ろうと意識を集中していたラモ通信士に、誰かが突然呼びかけてきた。
(もしもし、聴こえますか…)
「大変です!見知らぬ誰かが、急に私に呼びかけてきました」ラモは、すぐにソファーで仮眠していた博士を揺り起こす。
「ど、どこからだね?!」
博士は跳ね起きて、ラモの正面の椅子に座った。
「おそらく地球からだと思われます」
「地球!?ワンくんか?」
「いいえ…」ラモは首を横に振ると、再び通信に集中した。「も、もしもし、こちらは惑星ユーラシア、ニュー・シブヤ・ドームのラモージロ通信士。キミはいったい誰なんだい?」
(ぼくは、ジュニア。エース・ジュニアです)
「エ、エース・ジュニア…!ま、まさか!」
(ラモさん。あなた、お父さんのお友達なんでしょ?)
「キ、キミは、まさかエースの?」
(はい、息子です。今年15歳になります♪)
「鼻歌…!?たたた、大変です、博士、多分あなたのひ孫さんからです!!」
「なんだと!?」博士は渡されたメモを見て、ほとんど卒倒しそうなポーズをガチンコでとっていた。「本当に母親はコーラなのか!?訊いてくれ!」
「お母さんは?お母さんの名前は?」
(コーラ・アシモフですけど…。それがなにか?)
「やっぱり!コーラは15年前の地球に着いたのか…。」
ラモは、それから長い時間をかけて英雄たちの最期のエピソードを詳しく聴き出し、博士に伝えた。
「それでは、いま地球に生き残っているのは、コーラとワンと、エースの息子の三人というわけか…」博士はハンカチで目じりを拭い放心していた。
「ところでジュニア、なぜ突然連絡を?」
(おかあさんから、伝言を頼まれて…)
「なんでキミが?ワンに頼めばいいのに」
(ワンさんはマウイの女性と結婚して、ただの駄々コネおじさんになっちゃいましたから…)
「すでに通信能力を失ってしまったというわけか…。しかしなぜ初心者のキミが、こんなにクリアに通信できるんだ?」
(こっちが訊きたいです。みんな、なんで出来ないのかと…)
「参ったな…」突然の高性能ミュータントの登場に、ラモの方がうろたえる。「で、お母さんの伝言というのは?」
(母はそそっかしくて、ある人との大切な約束を忘れていたようなんです…)
「言ってごらん…」ラモは再びペンを握りメモをとり始めた。「なにをすればいい?」

ニュー・シブヤ・ドームのダウンタウンのマルキューの前に、インセックの中央指令本部がある。
その玄関前に、突然立派な記念碑が建てられた。
それは、英雄的追跡の果てに職務を全うし僻地で殉職した二人の追跡官の勇気を永遠に讃える等身大の銅像だった。
――デコ追跡官とボコ追跡官:「どこまでも追い続ける二人の英雄の像」
中央政府の強権の象徴であるインセックの施設の前に建っているにもかかわらず、このモニュメントにはなぜか毎日多くのヒューマン達が祈りを捧げに訪れる。
その本当の理由を知る二人の男が、感慨深い表情で像を見上げていた。
「これが、勇者たちを地球へと導いた二人の使者か…」ラモ通信士がポツリと言った。
「ルーニーズを追いかけてここの玄関を飛び出した名も無き追跡官が、未来の英雄伝説の重要な登場人物になるとは…」アシモフ博士は腕を組み考え込んだ。「神様も本当に不思議な物語を思いつかれたたものだ…。職務を全うしたことを上司に報告できて、彼らもさぞかし喜んでいることだろう」
「博士、そろそろ日が暮れます」ヒゲ面の伊達男がウインクをして誘った。「ヒューマンの仲間たちが集まるいい秘密バーがこのすぐ近くにあるんですが…」
「BARエンジェル・ハンズのことかな?」
「はい、よくご存知で…」ラモがアゴ鬚を擦り上げて空を見上げた。「あのバーは、もはやヒューマン達の隠れた聖地になりましたよ」
「今宵は、あのルーニーズ達が遺した名曲の数々を端から聴きながら、勇者たちの想い出に浸るとするか」
「ロックがマザーアースで生まれて3000年以上経ちますが、その魂はあの三人組の心にしっかりと生き続けていたんですね。それが、世界を破滅から救うとは…」
「そしてそのスピリットは、ジュニアへとしっかり受け継がれたようじゃな…」
うなずきあった二人は銅像に小さく敬礼すると、並んで路地裏に入っていった。


【THE END】


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ワダマサシ(本名:和田将志)
「HEART×BEAT]事務局発起人。
東京都出身、慶應義塾大学商学部卒。
ビクター・エンタテインメント、ソニー・ミュージックで
長く音楽制作業務に携わる。
2004年シンク・アンド・リンク(株)設立。
2007年逢谷人(おうや・じん)のペンネームで
処女作にして700枚超の長編小説「エンジェル・ハンズ」執筆。
ブログ村サスペンス小説ランキングで1位に。
同年、続編の「ファイアー・ウォール」完成。
同時にソニーミュージックとシリーズの原作契約締結。
2008年秋、三部作最後の「タイム・キラー」完成。
現在、映画化へ企画進行中。



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2009年09月28日

最終章 満月の審判<最終回:後編>

Story By ワダマサシ


――エース…エース
微かな声が、自分の名を呼んでいる…。
それは、身体の中心から湧き上がってくる粟粒のように曖昧で儚い響きだった。
幼い頃、高熱に魘(うな)されて見た奈落に堕ちる夢の途中で、こんな声を聞いた憶えがある。
エースは、片隅に埋もれていた遠い記憶をたどった。
たしかあの時は、まだ一度も会ったことのない母の幻に応え、気がつくと無機質な病室のベッドの上だった。
もし声を無視して堕ち続けたら、隣で微笑んでいた“死”と何も恐れることなく親しくなれたのだろう。
そうか…オレはこれから死ぬのだ。
返事をするのはもうやめ、早く肩の荷を降ろそう…。
――エース…エース
こんどは四方から響く呼び声が、全身の皮膚を優しく撫でていく。
それはエースの身体にまだ輪郭が残っていることを意識させ、その境界を越えて魂が逃げ出してしまうのを必死で防いでいるかのようだった。
いつしかエースは、自分が羊水の中をゆらゆらと漂っていることに気づいていた。
死が再生と同義語だったとは…。
エースは、心から充たされた気持ちで、堕ち続け、同時にどこかに昇っていこうとしていた。
――エース!!
声の粒子が、先ほどとは明らかに変ったようだ。
それは、エースに絶対に死ぬ事を許さない、切なさを秘めたリアルで懐かしい声だった。
エースはその声の期待に応えようと、閉じかけていた瞼を意志の力でこじ開ける。
すると、去っていく大切な人の顔が目の前にはっきりと見えた。
――コーラ!!
エースは愛する人を取り戻そうと、思いきり腕を伸ばし全身でもがき続ける。
その哀れな様は、一縷の藁に縋る溺れかかった亡者のようだった。
どんなに足掻いてみても、二人の間の距離は抗い難い運命の奔流に引き裂かれ、無情に広がるばかり。
やがてコーラは小さく頷き、避けられない別離に対する諦めと受諾の意思を示した。
同時に瞳に大量の涙が溢れ、エースは呼吸を忘れて嗚咽していた。
呼べど叫べど、もう声の届くべき場所はどこにもなかった。
交差する二人の眼差しが途切れる寸前に、エースは愛する人のシルエットを掌に掴みとり、その拳を胸のど真ん中に叩きつけて見せた。
コーラは、自分が恋人の胸の中に生き続けることに安堵し、笑顔で虚空に消えて行った。

  *

波音が聴こえる…。
引いては寄せる海の囁きが、同じ間隔で何度も何度も繰り返されていた。
このままいつまでもそれを聴いていたい欲求を抑え、エースはゆっくりと瞼を開いた。
顔が半分砂に埋まっているのだろう、地表の高さから左目だけで見る夜明けの海は無限の彼方に広がり空と溶け合っていた。
「ここは、どこだ…?」
エースは、まだ自分が生きていることを確めるために上半身をそっと起こした。
白々と明けかかった空に、“たった一つだけ”の月が満ちている。
「着いた…。ここは、地球…!」
しかし、その時エースの心の中に湧き上がったのは達成感などではなく、それを遥かに凌駕する圧倒的な喪失感だった。
「コーラ!!」ひたすら愛だけを求めるその叫び声は、潮風に運ばれ大地に染み込んでいった。
それからエースは、涸れ果てるまで涙の雫を砂浜に落し続けた。
その一滴一滴が、マザー・アースの怒りをゆっくりと鎮めているとも知らずに。

「おおい!!」
何時間、いやそれとも何日間、ここで泣き続けていたのだろう?
遠くから呼びかけるこの懐かしい声がなければ、この砂の上で一片の流木のように朽ち果てていたことだろう。
「おい!エース!!」
朝陽の中全力で駆け寄ってくる仲間たちの姿は、エースに再び立ち上がる力を蘇らせていた。
縺(もつ)れる足で声のする方へ反射的に走りだしたエースは、仲間たちと波打ち際で強く抱擁しあっていた。
「スカー!ハンマー!よく生きていてくれた…!」
「エース、心配させやがって!お前こそ、てっきり死んじまったのかと思ったぜ!」スカーがメタル・アームでエースの背中をドンドンと叩く。
「よかった…!お前まで失ったら、オレはもう…」ハンマーがエースの肩を掴む手に力を込めた。
「何?お前までって?!ワ、ワンは!?」
「コーラは?コーラはどうした!?」
3人は、姿の見えない大切な仲間たちの消息を伝えあった。
「ワンは…航路の中で見失ってしまった。全部、オレのせいだ…」ハンマーが、膝を拳で叩いて悔しがる。「一緒に連れていってくれとアイツは泣いていた。でも、強い力に引き離されてしまってどうすることも出来なかったんだ。ワンは、手を振って暗闇の中に消えていったよ」
「そうだったのか…。実は、オレも…」エースは、命よりも大切な人を航路の中で失ったことを仲間たちに話していた。
「航路の中で迷ったら、いったいどうなるんだ?」スカーが重苦しい沈黙を破り、リーダーに酷な質問をぶつけた。
「理論的には、コースを逸れてしまったらそのまま永遠に彷徨い続けるしかない…」エースは目線を浜に落したまま、苦しそうに言った。「バイパスの脇道は、例えると抜け道のない迷路のようなものらしい」
「永遠にか…」スカーが前髪で表情を隠し頭を振った。「これでは伝説の預言が正しかったことになっちまう」
「やはりオレたち3人しか着けなかったのか」ハンマーが、いきなり年寄りのようなため息をひとつ落とした。「なんと言うことだ…」
気がつくと、3人の勇者たちは今までの旅の苦難を一瞬で吸収してしまったように、驚くほど老け込んで見えた。
「でも、そんなことは絶対に信じない!」エースが宣言して立ち上がる。「オレは、コーラを、ワンを、きっといつか探し出してみせる!♪」
リーダーの力のない鼻歌を聴いた仲間たちは、それがもはや叶わぬ願いであることを悟っていた。
やがて3人は、立っていることが辛くなってきていることに気づく。
「なあ、エース。しばらくここで休もうじゃないか…。初めて見る憧れのマザー・アースを楽しもう」一番元気者のはずのスカーが、椰子の樹の見える浜辺に腰を下ろすことを提案する。
忍び寄る終焉の時を感じ、疲れきった仲間たちは並んで砂浜に座った。
「辿り着けなかった二人の分まで、この光景を瞳に焼付けようぜ」ハンマーが言った。
勇者たちを迎えた地球の海は、ロットネスト島の悲しいイミテーションとは比べ物にならないほど大きな愛に満ちていた。
「月並みな言い方だが…なんて美しいんだ…♪」
「いつか見たあの写真の通り」スカーが言った。「来てよかったな…」
「MAUIと書いてあった、あのオールド・フォトか…」ハンマーがドームの閉塞された日々を思い出し言った。「ついに、あそこから神が生命をお創りになった場所に着いたってわけだ」
「そう、ここがオレ達の約束の地だ♪」
しばらくの間、3人は瞬きも忘れて神々しい夜明けの海に見入っていた。
「なあ、みんな…オレは幸せだったよ♪」エースがポツリと言った。「お前たちに出会い、ロックを演奏し、旅をし…初めて人を好きになった。何度、生まれ変わっても、オレは同じことをするだろう」
「それ、この前も聞いたぜ」スカーが目頭を押さえて言った。
「オレも同じ気持ちだ…ゴ、ゴホッ…」ハンマーが、急に咳き込みながら言った。「博士が言ってた。ドームのひ弱な人間が地球に着いたら、どうせすぐに死んじまうって…ゴホッ」
「エース、オレ達あとどのくらい生きられる?」スカーが、ハンマーの様子を見ながら訊ねた。
「どのくらい?!まだ時間のことを気にしているのか?」エースが呆れ顔で親友たちを見た。「時の流れなどに、いったいどんな意味がある?今がすべて。それでいいじゃないか♪」
「そ、そうは言うけど…」ハンマーが片手を砂浜に置き、倒れそうな身体を支えた。
「“一瞬”に長さなどない。その積み重なりが“時”ならば、瞬間も永遠も、過去も未来も同じこと…♪」そう語るエースの唇も、乾いて生気を失っているように見えた。
「他の仲間たちとも、この一瞬を分かち合いたかった」スカーが乱れた前髪を潮風に揺らせて言った。
「オレは信じる!コーラも、ワンも、きっとこの光景を見ていると…♪」
生まれたばかりの太陽が、神がこの世界を創造した日と同じように地上を明るく照らし出す。
――ドサッ…!
突然ハンマーが砂浜に倒れこみ、スカーの隣に横たわった。
「ハ、ハンマー!」驚いたスカーがハンマーの身体を揺する。「どうした?」
「す、少しだけ、寝かせてくれ…」ハンマーは小さな声で応え、微笑んで静かに瞳を閉じた。「な?いいだろう…?」
「ハンマー、ハンマー!」
去りゆく仲間を引き止めようと試みるスカーの叫びが、エースの耳には波音と同じ愛に満ちた自然の囁きに感じられる。
「スカー、ゆっくり休ませてやれよ」エースは押し寄せる悲しみを振りきり、親友にそっと呟いた。「どうせ行き着く場所は、誰も同じだ」
「うん…」スカーも達観したようにハンマーの頭を自分の膝にのせ、水平線を真っ直ぐに見た。
「そうだ…!」エースは何か大切なことを急に思い出し、ふらつきながら砂浜に立ち上がる。
「ど、どうした?」スカーがリーダーの突然の行動に首を傾げた。「なにをしている?」
エースはウインクを一つスカーに返すと、つま先で砂浜に曲線を描き始めた。
「なんだそれ?」スカーが完成した歪(いびつ)な円形を見て、肩をすくめた。「ハート…?なんでそんなものを?」
「コーラと約束したからな♪」エースは、大きなハートの前に座りこんで言った。「オレ、小さいからさ。アイツに、見つけだしてもらうための目印さ…」
「エ、エース…」スカーの瞳に涙が溜まっていた。
その時、神様が勇者たちに贈った朝凪が訪れ、砂浜は完全な静寂に包まれた。
すべてを成し遂げた3人の勇者たちは、マザー・アースの懐に抱かれるように天を仰ぎいつまでも横たわっていた。



マウイと呼ばれる孤島の小高い丘の中腹に、マザー・アースに住み続ける少数民族の部落があった。
椰子の樹とその葉で作られた高床の家屋の中庭に、早起きの子供たちの天使のような笑い声が響いている。
この部族の中で賢者として皆に敬愛される男が、「三人の勇者の物語」を子供たちに語り終わり、ゆっくりと清水で喉を潤した。
「それから?それからどうなったの!?」ききわけのない子供が、地球に到着してからの勇者の運命をどうしても知りたがる。「三人は、結局死んじゃったの?それとも、またどこかに旅に出たの?」
「さあ、そこから先はみんなの想像にまかせることにしよう…」ヒゲを蓄えた小柄な賢者は、優しい笑みを浮かべて今朝の話を締めくくった。「もうそろそろ、朝メシの時間…」
「ええ!?もうおしまい?つまんない、つまんない!」
おいしそうな湯気の匂いに急かされ、賢者は子供たちの頭を撫ぜながら立ち上がり大きく伸びをした。「おや…?」
広場の向こうから、島で一番足の速い少年がこらちに向って走ってくるのが見える。
「浜辺に、浜辺に…!」
「浜辺が、どうした?!」賢者は、少年のただならぬ様子に驚いて訊き返した。「なにがあった?」
「“サイン”が!!」膝に両手を当て必死に呼吸を整える少年は、あまりの発見に驚き次の言葉を捜していた。「はあはあ…、ずっと、さ、捜していた“勇者の印”が…」
「ササササ、サイン!?勇者が還ってきた!」賢者は、すぐに少年に伝える。「コーラにすぐ伝えろ!すぐに英雄を浜辺に迎えに行くあるぞ!」

砂浜に描かれた大きなサインは、丘の中腹からもはっきりと見えていた。
大声で叫びながら村人と共に丘を駆け下りるコーラとワンを追い越し、すばしっこい少年が英雄たちの下へ真っ先に駆け下りてゆく。
浜辺は不思議なほど風が凪ぎ静まり返っていた。
少年が駆けつけると、大きなハート・マークのそばに一人、そしてそのすぐそばに二人の勇者たちが虫の息で倒れている。
「伝説の通りの人たちだ…」命懸けの冒険を乗り越えたその姿を目の当たりにして、少年は立ちすくみ呟いた。
「エース!」息を切らせ追いついたコーラが、サインの前に祈るような格好で倒れる勇者に駆け寄る。「ずっと、ずっと待ってたんだから…!」
聴きなれた声に驚いたように反応したエースは、最後の力を振り絞り片目を開けて愛する人を見た。「コ、コーラ…!あの時、手を離しちゃって、ゴ、ゴメンな…」
「そんな昔のことなんか、もうどうでもいいから…」コーラは、母のような優しい笑顔でエースを抱きしめ言った。
「む、昔…?」
神の溜息のような浜風が、ほんの少し白いものの混じったコーラの後れ毛をそよそよと揺らした。

エースをコーラに任せ、伝説の語り部である賢者がハンマーとスカーのところに駆け寄る。
「地球に連れてきてくれて、本当にシェー、シェー!」ワンは倒れている二人の英雄に交互に声をかける。「ハンマー!スカー!ハンマー!スカー!」
「お、お前、ちょっと見ないうちに大人になったな…」スカーが薄目を開けてワンを見た。「立派になったじゃないか。ヒ、ヒゲなんて生やしちゃってさ」
「もう、とっくの昔に大人あるぞ…」ワンは照れくさそうに頭を掻いてから、スカーの膝に身を預けるハンマーの紫色の唇を見た。「ハ、ハンマーは?大丈夫あるのか?」
スカーがその辛い質問に、首を横に振って答えた。
「いやいやいや!いややややややだだだ…」
「いい年して、駄々こねてると天国のハンマーが怒り出すぞ…!」スカーが、ワンの現状をそれなりに察して言った。「お、お前も、どうやら一人前のようじゃないか」
「早く、治療をするある!」涙を浮かべたワンが、肩で息をするスカーを動かそうとする。
「いいんだ…」スカーが満足したように、瞳をゆっくり閉じた。「もう休ませてくれよ…」

さざ波が、もっと遠くに旅立つようにとエースに手招きをしている。
遠ざかる意識の中で、エースはすべてをおぼろげにでも理解しようとしていた。
バイパスの中で逸れたコーラとワンは、何年も前にこの海岸に先にたどり着き、自分たちの到着をここでずっと待っていたのだろう。
航路の中で迷っていたのは、実は“自分たちだった”のだ。
「い、今は、幸せなのかい?」エースは、美しい少年と並んで自分の顔を覗き込むコーラに訊ねた。
泣き笑い顔のコーラは、小さく頷いて言った。「エース、この子は“英雄の息子”よ」
「ま、まさか…!?」エースは驚きの眼差しで、かつての自分にそっくりの少年を見つめた。「な、名前は?」
「ジュニア。エース・ジュニアといいます」瞳を潤ませた少年は、母とずっと待ち続けた“父”の手を誇らしげに握り、照れくさそうに呼んだ。「おとうさん…」
初めて会う息子からその一言を聞くと、エースは愛する人の腕の中で本当に満ち足りた笑顔を見せた。
「ありがとう…オレは…やっと家族を…肉親を…手に入れた…」
エースが最期の瞬間に見た空は、その生涯で一番高く青かった。



<完>

[エピローグ]へ…

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ワダマサシ(本名:和田将志)
「HEART×BEAT]事務局発起人。
東京都出身、慶應義塾大学商学部卒。
ビクター・エンタテインメント、ソニー・ミュージックで
長く音楽制作業務に携わる。
2004年シンク・アンド・リンク(株)設立。
2007年逢谷人(おうや・じん)のペンネームで
処女作にして700枚超の長編小説「エンジェル・ハンズ」執筆。
ブログ村サスペンス小説ランキングで1位に。
同年、続編の「ファイアー・ウォール」完成。
同時にソニーミュージックとシリーズの原作契約締結。
2008年秋、三部作最後の「タイム・キラー」完成。
現在、映画化へ企画進行中。



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2009年09月24日

最終章 満月の審判<最終回:前編>

Story By ワダマサシ



皮肉にも、旅立ちの朝の空は、ロットネスト島に着いて一番と言えるほど青く高かった。
最後の朝食を終え外に出た旅人たちは、思わず出発の延期を考え始める。
「あとせめて一週間ほど、ここにいるってのはどうなんだろう?」ハンマーが、浜辺から駆け上がってくる潮の馨りを深く吸い込んで言った。「干潮は今日だけじゃないぜ」
「まだ行ってみたいところが沢山あるしな」スカーも思わず誘惑に負けそうになる。「島の裏側には、もっとすごい景色が待っているかもよ」
「きまりあるね!丘の向こうに泉を見つけたある。出発は、皆であそこにピクニックに行ってからでもいいと思うあるよ」
「おいおい、この島のピクニックならもう充分にやったじゃないか」エースが肩をすくめた。「オレ達を待っている地球の空は、きっとこんなもんじゃない。この何倍も美しく澄み渡っているさ♪」
「そ、そうかな…」ハンマーが名残惜しそうに、また無人島の空を見上げた。
「みんな…気持ちはわかるが、ドームで虚無が広がっていることを忘れるな。こうしている間にも、何人もの若者が自らの生命を絶っているんだ。もうこれ以上一刻の猶予もない」エースはリーダーとして毅然とした態度を見せる。「予定通り今日の夕方出発しよう…!」
コーラは一言も語らずに、エースの決断に耳を傾けている。
旅人たちはその健気な横顔を見て、すぐに納得した表情で頷きあった。

「あんれまあ、キレイな流れ星だわさ。爺、見てみろ」
惑星の裏側で、フリッグが夕暮れの山際に降る星屑を指折り数え始めた。「ひと〜つ、ふた〜つ、みっつ。…よっつ、いつつ!」
「確かにいま五つの流れ星が見えただがに…」オージンが言った。「数えるのに夢中で、願い事を言うのを忘れたがに…。失敗、失敗」
「余計なことせんでええよ、爺。いまの五つの星屑は、あの若者たちの魂だわさ」
「何かをわしらに伝えようとしたかに?」
「きっと、これからうんと遠くへ旅立つんだわさ。それで、サヨナラを言いにきたに違いないわさ」
「うんと遠くって、いったいどこだがに?」
「それはきっと…天国だわさ」
「何を言う婆さん。縁起でもないがに!」
「爺も言うことが小さい小さい。あたしゃ、この世の生き死にのことを言ってるんじゃないわさ!」フリッグの目には涙が溢れていた。「旅人たちの目的地はそんなちっぽけなとこじゃない。もっと大きな場所…神の懐に抱かれに行くんだわさ」
「神の懐…」オージンが両手を空に突き出し、天空を自分の胸の中に納めようとした。「そう言やあそうだがに。少なくとも、わしらの胸の中には、いつまでもいつまでも生きているがに…」

夕映えの中を砂浜に下りていく若者たちの足取りは、さすがに鉛のように重たかった。
先住者が残した真新しいブルーの作業服に着替えた姿が、まるで安全が保障されていなかった古代の宇宙船に乗り込む直前の緊張したクルーのように見える。
「キレイな夕空だな」
「ん?なんか言ったか?」
「いや別に。腹は減っていない…」
緊張を隠すために試みたハンマーとスカーの会話が、切ないほど空回りする。
その後、崖の途中で話そうとする者は一人もいなかった。
砂浜に下りると、潮は見事に遠くまで引き、浜風は出発を祝福するように優しく凪いでいた。
スカーが岩で目印されたゲートに真っ先に駆け寄り、その様子を窺った。
――ウィーンウイーン…
遥か彼方からの伝わってくる航路のエネルギー音が、まるで出発のベルのように旅人たちを誘う。
「広さも申し分ない」スカーが吸い込まれそうな“無”の暗闇を覗いて言った。「三人ほどいっぺんに入れそうだぜ」
「どれどれ?」ハンマーが屁っぴり腰でゲートの淵に立つ。「200光年…ぞっとする深さだな…。これでワープは三度目だが、今回が一番ビビルぜ」
「一番楽しみと言ってくれよ。ここを通り抜けた向こうは、憧れのマザー・アースだ♪」
この旅立ちが同時に誰かとの別離を意味することを知る旅人たちは、リーダーの努めて明るい声に同時にうなずいたものの、そのまま顔を上げることが出来ない。
ゲートを囲んだまま、五人はしばらく無言で航路のノイズを聴いていた。
「みんな、ほんとうにありがとう…ある。ここまで連れてきてくれて、ほんとうに嬉しかったあるよ。いままで我慢してたけど、やっぱり言うある」ワンが覚悟を決めたように言った。「…サヨナラ」
「バカ!なにがサヨナラじゃ!」ハンマーがまるで父親のようなやり方でワンを抱きしめた。「オレは別れの言葉なんて、絶対に言わんぞ!」
それを合図に、旅人たちは一人ずつ抱き合いその温もりを確かめ合う。
それは、サヨナラという言葉を封印した最後の惜別の儀式だった。
「さあ、出発しよう…」エースが皆の顔を見渡して言った。「向こうで全員が再会出来ると、オレは信じているから♪」
その言葉に、仲間たちは吹っ切れたような笑顔で応えた。
出会いと別れ、喜びと悲しみ、永遠と刹那、生と死、それら全てを超越した微笑みがあることに、旅人たちは生まれて初めて気づいていた。

いつの間にか、空が美しいグラデーションを描いていた。
夕焼けに炙り出され、空には再びあの満月がうっすらと浮かんでいた。
「出発の順番は昨日のクジ引きの通りだ」エースがゲートの前に立ち言った。「スカーが一番、次がワン。コーラは三番目。四番目がハンマーで、最後がオレだ。みんないいな?」
「この期に及んで申し訳ないが、コーラと順番を代わってもらっていいかな?」ハンマーが言った。「ワンが、どうしてもオレに抱きしめられて旅立ちたいらしいんだ。キュキュっとな」
ワンが、首をカタカタと縦に振った。
「お前らキモイこと言ってんじゃねえよ」エースが苦笑する。「どうせ向こうに着いたら、またすぐ全員一緒だぜ♪」
「そりゃあそうだが…。ワンが駄々をこねるとやっかいだし…」ハンマーがウインクをした。「頼むよ!」
「でも、せっかくクジ引きで決めたんだし…♭」
「いいじゃないか。あんまり固いこと言ってると嫌われるぜ」スカーが言った。「な?コーラ、いいだろ?」
頬を赤く染めたコーラが、肩をすくめて微笑んだ。「わたしはどちらでも…」
エースが照れくさそうに頭を掻き、承諾の意思を表明した。
――ウィーンウイーン…
航路のノイズが出発を急かすように大きくなっていく。
「みんな、地球で会おう!♪」スカーが、仲間たちに旅立ちを宣言した。
いつも先陣を切る頼もしい男を、みんな眩しそうに見つめる。
「ちょいとそこまで行ってくるぜ!」スカーがさりげない表情で応え、ゲートの上に片足を伸ばした。「じゃあな!」
――ウイーン…
暗闇があっという間にスカーの姿を呑み込み、何事もなかったように虚ろな洞窟に戻った。
「さてと。オレ達も後に続くか。エース、コーラ、お先に!」スカーのあまりにもあっけない旅立ちに勇気づけられ、ワンとハンマーが抱き合ってゲートの淵に立った。「行ってくるある!」
「おまえらは、マジでおホモ達か!?♪」
――ウィーンウイーン…
その言葉を無視して、二人は虚ろな闇の中に一瞬で消えていった。
残された恋人たちの足元にも、夜の闇がそっと忍び寄ってくる。
「さあ、コーラ行こうか♪」エースが愛する人に右手を差し出した。
「絶対に離さないでよ…」コーラがエースの腕の中で囁いた。
唇を重ねる恋人たちの影がふっと砂浜からかき消えると、ロットネスト島は再び元の無人島に戻っていた。
誰も聴く者がいなくなった後も、波音がいつまでも絶えることなく繰り返されていった。


続く…




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ワダマサシ(本名:和田将志)
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東京都出身、慶應義塾大学商学部卒。
ビクター・エンタテインメント、ソニー・ミュージックで
長く音楽制作業務に携わる。
2004年シンク・アンド・リンク(株)設立。
2007年逢谷人(おうや・じん)のペンネームで
処女作にして700枚超の長編小説「エンジェル・ハンズ」執筆。
ブログ村サスペンス小説ランキングで1位に。
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2009年09月18日

最終章 満月の審判<19>

Story By ワダマサシ



――地球に帰還できるのは、5人のうち3人の勇者だけ…。
ラモージロ通信士からの残酷な知らせは、出発に向けて結束していた旅人たちを奈落の底に突き落とすのに充分だった。
「オレ達は、ただのロック好きの“ろくでなし”だ。勇者なんかじゃない!」エースが憤慨し大声を上げた。「伝説なんかに運命を決められて堪るか!」
「きっと他のご立派な誰かさん達と間違えられているのさ」スカーが同調する。「だいたい、まだ地球に到着してもいないオレ達が未来の伝説になるなんて…。バカバカしいにもほどがある!」
「だったら、なんでラモさんは連絡してきたんだろう…」ペシミストのハンマーが言った。「出発直前のオレたちに警告してきたのはなぜだ?」
「そ、それは…」エースが説明できずに口ごもる。
「確実に訪れる別れを、前もって覚悟させるためよ…」コーラがエースの代わりに淡々と説明した。「ラモさんは、一緒にいられる限られた時間を無駄にさせたくないんだわ…」
「違う!きっと全部作り話あるぞ!ラモさんは、めちゃくちゃ言っただけある!」ワンが子供のように反論する。「うそ、うそ、うそ!うそそそそそそ…うそ!」
「また失神するぞ、やめておけ♭」
旅人たちは突きつけられた運命の通達を噛み締め、つぎの言葉を見つけられずにしばらく虚空を見つめ黙り込んだ。
「みんなでここに暮らせばいい…」コーラの小さな声が静寂(しじま)を破った。「離れ離れになってまで旅を続ける意味なんてない。ねえ、そうでしょ、エース?」
エースは答えられずに、自らの手の平に視線を落とした。
やがて意を決したように、リーダーはポツリと重い口を開く。「でも、誰かが地球に行かなければ…」
その言葉を聴いたコーラは、深い落胆の表情を隠しきれなかった。
「エース、コーラと二人でここに残ったらどうだ…?」スカーがリーダーの苦しい胸の内を察し、その肩に力強く手を置いて言った。「コーラをここにたった一人残すわけにはいかない。彼女を守れるのは、お前しかいないじゃないか」
エースは瞬きも忘れて親友と愛する人の顔を交互に何度も見詰め、その提案を受け入れゆっくりと頷こうとしていた。
「ありがとう、エース…。でも、ダメ。やっぱりダメだよ…!」コーラが満足したようにエースを優しく制し、振っ切れたような表情で言った。「わがまま言って本当にごめんなさい。あなたが地球にたどり着かなければ、この旅の意味はないわ!」
「じゃあ、どうするつもりだ?」ハンマーがコーラの顔を心配そうに覗きこんだ。
「わたしも、みんなと共に旅立つ!たとえそれがどんなに危険なことでも、たとえ別れてしまうことが分かっていても、出来る限り長く一緒にいたいもの。1分でも1秒でも!」
「どうなってもかまわないと…?」エースが悲しそうな顔で念を押す。「航路の中で永遠に離れ離れになるかもしれないのに…」
「平気よ!万が一そんなことになっても…」コーラは晴れやかな泣き笑いの表情になっていた。「エース、私のことを絶対に忘れないでね」
エースはこの旅で初めての大粒の涙を浮かべ、コーラをきつく抱きしめた。「お前を離したりするもんか!」
「わたしも絶対に一緒に行くあるぞ!」ワンも涙を拭いもせずに言った。「社っ長、伝説なんかクソ食らえある!新しい伝説を作るあるよ!」
その言葉を合図に、5人の若者たちは肩を抱き合い一つの塊になっていた。

それから出発の日までの三日間、若者たちは旅支度を整えながらロットネスト島で最期の濃密な時間を過ごした。
別れのことを口にするのは絶対にやめようとルールを決め、5人は努めて明るく振舞い続けた。
その絆の強さで、どんな運命さえも塗り替えられると誓い合って…。
特にエースとコーラは、片時も離れずに、もうすぐ幻に変るかもしれない愛を心に刻みつけようとしていた。
しかし、どんなに否定しても忍び寄る別れの予感は拭う事が出来ず、いつまでも二人を、そしてそれを見守る仲間たちを苦しめ続けた。

明日は旅立ちという晩、旅人たちは最後の晩餐のテーブルについた。
「今まで本当にありがとう…。みんなと出逢えてとっても幸せだったよ」エースが急に真顔になり言った。「こんど生まれ変わっても、オレはみんなを捜し出してやっぱり同じことをすると思う♪♭」
「エース、今日の鼻歌は酷くシンミリしてるな」ハンマーがリーダーの背中を大きな掌でどついた。「旅立ちの祝いの席には相応しくないぜ!」
「す、すまん」
「これもっと食べるある!」ワンが畑で収穫した麦粉と缶詰の合成肉で強引につくったシュウマイをみんなにすすめた。「ウマイあるぞ」
「少し粉っぽいね」コーラが舌を出して言った。「でもおいしい…」
ワンが作ったシュウマイは、涙の味がした。

「少し散歩をしてくる」
食事を済ませると、エースはコーラを誘い星屑が降りそうな夜の浜辺に下りていった。
小屋に残った三人の若者は、先住者の遺留品のワインを飲みながら語り合う。
「いいか!オレたちは必ず全員地球にたどり着けるさ!」スカーが自信に溢れた声で言った。「オレ様の勘はあたる!信じていいぜ」
「ホントあるか!?わたしだけみんなと逸れてしまう気がして、心配でしょうがないあるぞ」ワンが迷子の子供のような哀れな顔をした。「途中で無理やり旅の仲間に入れてもらったあるから…」
「心配すんなよ。お前はもうとっくにルーニーズの一員さ。そうだ!」ハンマーが提案した。「…みんなの体を絶対に切れない鎖かなんかで一つに繋いだらどうだろう?」
「オレもエースにそう提案してみた」
「そうしたら?」
「エースは言ったよ。万が一航路の中で何かが起こったら、身体の方が鎖で引き裂かれ、死んでしまうかもしれないって…」
「つまり、ヤツも別離の予感を本当は受け入れているんだな」ハンマーが言った。
「そ、そうじゃないだろうけど…。危険過ぎるとオレも思うよ」
「じゃあ、せめてみんなで抱き合ってがんばるある」
「オレがお前を抱きしめてやるさ」ハンマーがワンに力強く言った。
「シェーシェー、シェーシェー!ちょとキモイけど、シェーシェー!」

再び満ちた双子の月が、ロットネスト島の砂浜に座る恋人たちを仄かに照らしていた。
「もし離れ離れになっても、きっと私を見つけ出してね」コーラが輝く水平線を見つめ囁いた。
「ああ、絶対にな!約束するよ…」エースは、潮風にそよぐコーラの髪にそっと手を伸ばした。
「そうだ!お互いの目印を決めておこうよ」コーラが急に立ち上がり、悪戯っぽい笑顔を見せた。
「目印?どういうこと?♪」
「地球に着いた時に、もしも私の姿が見えなかったら…砂浜に大きくハートを描いてよ」コーラはつま先で砂浜を掘りながら言った。「ほら、こんな風に…」
「ハート…?コーラがそれを頼りにオレを捜してくれるってこと?」
「うん、絶対にね!私も大きく描くから、エースも必ず私を見つけてよね」
「任せとけって!」エースも立ち上がって、コーラのハートを囲むようにもっと大きな目印を描いていた。


続く…

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ワダマサシ(本名:和田将志)
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東京都出身、慶應義塾大学商学部卒。
ビクター・エンタテインメント、ソニー・ミュージックで
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2004年シンク・アンド・リンク(株)設立。
2007年逢谷人(おうや・じん)のペンネームで
処女作にして700枚超の長編小説「エンジェル・ハンズ」執筆。
ブログ村サスペンス小説ランキングで1位に。
同年、続編の「ファイアー・ウォール」完成。
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